先輩から学ぶ失敗事例01: 立地選定のミス

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人通りが少ない場所に出店し、集客に苦労した。という話はよく聞く話です。今回は2018年頃にサラリーマンから飲食店業界に飛び込み、苦労されたというAさんの事例を見ていきましょう。

目次

インタビュー:サラリーマンから飲食店経営者へ—Aさんの失敗と教訓

Aさんは10年以上サラリーマンとして働いていたが、いつかは自分の店を持ちたいという夢を叶えるため、思い切って飲食店を開業しました。しかし、開業当初から思わぬ苦戦を強いられたそうです。

―サラリーマンから飲食店起業を決意された理由を教えてください。

Aさん:サラリーマン生活も充実していましたが、ずっと自分の意思で、自分の手で何かを作り上げたいという思いがありました。簡単な物ではありますが食べ物を作ったり食べる事自体が好きだったのもあり、夢とはほど遠く漠然とですが飲食店を経営してみたいと以前から思ってはいました。しかしいつかは自分の店でお客さんに喜んでもらいながら、自分らしい生活を送りたいと強く考え、40代に差し掛かったタイミングで一念発起し、自分の店を作る為に思い切って会社を辞めました。

―開業時に苦労したことは何でしたか?

Aさん:一番苦労したのは、集客です。実は、人通りが少ない場所に出店してしまったんです。開業前、賃料の安さと、自分が住んでいるエリアに近いということで、その場所を選びました。でも、これが大きなミスでした。通行人がほとんどいなくて、開店してからもお客さんが全然来ないんです。宣伝を頑張ろうとして、チラシを配ったりSNSで情報を発信したりしましたが、思うように効果が出ませんでした。

―なぜその場所を選んでしまったのでしょうか?

Aさん:正直に言うと、事前のリサーチが甘かったと思いますが一番の決めては安い賃料でした。家賃は安い方良いと思ったし、静かな住宅街なので、地元の人たちが来てくれるだろうと勝手に思い込んでいました。実際には人通りが少ないだけでなく、近くには大きな商業施設もなく、他に飲食店も少ないので、そのエリア自体に人が集まる理由がなかったんです。

―その後、どのように対応されたんですか?

Aさん:最初の半年は何とか宣伝を続けましたが、労力に限界が近づいてきました。そこで、思い切って立地を見直す決断をしました。人通りが多い駅前のエリアに移転することに決めました。移転先は賃料が高かったですし移転費用も必要でしたが、駅前の人通りの多さや競合店の存在が逆に集客につながるということに気づきました。結果、移転後はお客さんの数は過去よりも増え、なんとか持ちこたえてようやく店が軌道に乗った気がします。移転時、追加融資が通ったのが幸いでした。

―最初の立地選定から学んだ教訓は何でしょうか?

Aさん:人通りやターゲット層の動線を徹底的にリサーチすることが大切だと痛感しました。賃料が安いというだけで決めるのではなく、その場所が実際にお店を繁盛させるのにふさわしいか、しっかりと調べるべきでした。要は売り上げ予測です。また、競合店が多いからという理由で繁華街の出店を避けるのではなく、むしろそういったエリアに出店することで、地域全体が「飲食スポット」として既に認知されている。ということも学びました。

―最後に、これから飲食店を始めようとしている方々にアドバイスをお願いします。

Aさん:リサーチと売り上げ予測が重要です!どんなに良いアイデアやおいしいメニューがあっても、立地が悪いと売上がそもそも上がりません。継続した売り上げ確保や結果的な成功はとても難しいです。お店を構える場所が、ターゲット層にとって通いやすい場所かどうかをしっかり調べることや的確な売り上げ予測が一番大事だと思います。失敗を恐れず、しっかりとした準備をして挑戦してください。

このように、Aさんは最初の失敗から大きな教訓を得て、経営を無事に立て直すことができました。飲食店を開業する際には、立地選定が成功への重要な鍵であることを肝に銘じておきましょう。また、融資に強い税理士は良い味方になってくれるかも知れません。

Aさんの失敗からの教訓:立地選定のミス

人通りやターゲット層の動線を徹底的にリサーチして立地を選ぶことが重要ということなのですが、この失敗を避けるために必要だった考え方を、

  1. エリア戦略
  2. 広告戦略
  3. 差別化戦略

といった3つのアプローチから掘り下げて考察してみたいと思います。

1.ターゲット層へのアクセス(エリア戦略)

飲食店の成功には、ターゲット層が容易にアクセスできる場所に出店することが非常に重要です。これは「経路依存性」という心理的な傾向が関わっています。経路依存性とは、人が一度選んだ道や場所に依存し、繰り返し利用する傾向を指します。つまり、日常的に使う通勤・通学路、よく訪れるショッピングエリアなど、生活の一部として慣れ親しんだ場所に足を運ぶ傾向が強いのです。この心理を活用すれば、ターゲット層が日常的に通過するエリアに店舗を構えることで、自然と集客力を高めることができます。

さらに「同類相求む」という心理も、飲食店の立地選定において重要な役割を果たします。この心理現象は、人々が自分と似た属性を持つ人々や場所に引き寄せられる傾向を意味します。例えば、若い世代が集まるエリアでは、同世代が自然と集まりやすくなります。学生や若者が多く通う街にトレンドを意識したカフェやファストフード店が集中するのは、こうした心理的要因が関係しています。この現象をうまく利用すれば、ターゲット層が多く集まる場所に出店することで、ターゲットにフィットした顧客を集めることが可能になります。

魚がいない池でいくら釣りをしても、成果は上がりません。飲食店経営においても同様で、ターゲットとなる顧客層が存在しない場所に出店しても、いくら宣伝をしても来店者は増えないでしょう。反対に、ターゲット層が日常的に集まるエリア、すなわち「魚のいる池」に店を構えることは、顧客を集めるための基本的かつ最も重要な戦略です。

結論として、ターゲット層のアクセスしやすい場所に出店することが、安定した集客と売上を確保するための必須条件となります。ターゲット層が日常的に利用するエリアや、人々が自然と集まる場所を見極め、その動線に沿った立地選定を行うことが、飲食店の成功を導くカギなのです。

こんな店をやりたい!という強い希望を持たれて起業する方が、居ぬき物件と出会った場合に、こういったエリアマーケティングの観点が抜け落ちてしまい、ちぐはぐなターゲット設定から苦労されていることが多いように感じます。

2. 集客力の向上(広告戦略)

飲食店において集客力を向上させるには、顧客が自店を選択肢に入れてくれるよう、いかにしてお店の存在を流動的な顧客を含めて潜在的な顧客に意識させるかが重要です。ここで注目すべきなのが、心理学的に裏付けられた「単純接触効果(ザイアンス効果)」です。これは、顧客が特定のブランドやお店に繰り返し接触することで、好意を持ちやすくなるという現象を示しています。

例えば、チラシ、ダイレクトメール(DM)、SNS広告などを通じて定期的にお店の情報に触れてもらうことで、顧客は無意識のうちにその店の存在を覚え、好意的に感じやすくなります。研究によれば、ある商品やブランドに好意を抱くためには、最低でも5~7回程度の接触や認識が必要とされています。つまり、1度の広告やチラシでは顧客に大きな影響を与えることは難しく、継続的に接触、認識回数を増やすことが集客のカギとなります。

また、広告だけでなく、実際にお店の前を通る「リアルな接触」も効果的です。人通りの多い立地に店を構えることで、看板や店の外観が目に留まりやすくなり、自然と多くの人に認知される機会が増えます。このように、広告やチラシによる間接的な接触と、店の前を通りかかる直接的な接触の双方を組み合わせることで、顧客の頭の中に「この店がある」という意識を定着させることができます。
出店を考えるときに、看板の視認性や設置許可、条件などを契約前に確認しておかないと、広告コストがかさんで、キャッシュフローを圧迫することが予想されます。

ここで、集客における重要なポイントは、顧客との接点を作るために無駄な労力やコストをかけすぎないことです。例えば、ターゲット層が多く集まる場所に店を構えることで、自然な流れで多くの顧客に見てもらうことができ、過度な宣伝費用をかける必要がなくなります。また、オンライン広告などもターゲットを絞った精度の高い手法を取ることで、広告の無駄打ちを減らし、効率的な集客を図ることが可能です。

結論として、集客力の向上には、単純接触効果を活用して顧客との接点を増やすことが重要です。そして、そのためにはターゲット層が集まりやすい立地を選び、効果的なマーケティング手法を取り入れることで、集客にかかる労力やコストを減らすことができます。

3.競合との関係性

飲食店を開業する際、飲食店舗が多く存在するエリアでの出店を避けたいと考える人は多いかもしれません。しかし、実際には、適度な店舗数に限りますが競合が存在するエリアに出店することが、逆に集客力を高めることもあります。この理由は、多くの店舗が集積することで、そのエリアが「飲食スポット」として認識され、多くの人々が食事をする場所として意識的に足を運ぶようになるからです。

例えば、繁華街やショッピングモール内など、飲食店が密集している場所では、複数の選択肢があることで顧客は食事のためにそのエリアを訪れやすくなります。その結果、飲食店同士が競合しながらも、お互いの存在が集客力を相乗的に高めることになるのです。これは「集積効果」とも呼ばれ、特に飲食業においては重要な集客戦略の一つとなります。

しかし、起業したての飲食店経営者にとって、競合他社のリサーチはなかなか手が回らない部分でもあります。忙しい日常業務に追われ、近隣にどのような店舗があり、どんなメニューやサービスを提供しているのかを把握しないまま営業を続けてしまうことも少なくありません。このような状況では、自分の店が他の競合とどのように差別化できているのかが不明確となり、結果として他店との差がつかず埋もれてしまう可能性も充分にあります。

適度な競合が存在することは、むしろそのエリアの活気を作り出し、集客に貢献するため、有益であるといえます。しかし、それだけでは不十分です。競合他社の存在を理解し、自店を際立たせるためには、しっかりとした差別化要因を設定することが必要不可欠です。例えば、競合店では提供していない独自のメニュー、特定のニーズに特化したサービス、快適な雰囲気作りなど、他店にはない強みを打ち出すことが求められます。

結論として、競合他社の存在を恐れるのではなく、適度な競合が集積することで相乗効果が生まれることを理解し、しっかりとした差別化戦略を持つことが、飲食店経営の成功には必要なのです。競合のリサーチを怠らず、独自性を強化することで、そのエリアでの成功の可能性を大いに引き上げることができるでしょう。

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